正木大使から離任の御挨拶

令和5年11月14日
正木大使
2023年11月14日
欧州連合日本政府代表部 特命全権大使
正木 靖
 


 2023年も残すところ1ヶ月半となりましたが、この度、駐インドネシア日本国特命全権大使を拝命し、12月初旬にブリュッセルから離任することとなりました。
 
 2020年秋のブリュッセル着任から約3年に渡り、激動の世界情勢に直面し、その中で重要性を増すばかりの日本とEUとの関係強化に全力で努めて参りました。思い返しますと当地に到着したのはコロナ禍の最中であり、当地での業務はオンライン形式を駆使するなど工夫することから始まりました。そのような中、パンデミックを乗り越えるべく、EUから日本へのコロナ・ワクチンの円滑な輸出、治療薬やワクチンの共同研究開発・情報連携などを全力で進めてきました。当地着任後の初めての日EU定期首脳協議はテレビ会議形式での開催となりましたが、気候変動・環境対策の取組を加速させることを目指す日EUグリーンアライアンスの立ち上げが表明された他、幅広い分野について協力が確認されました。
 
 2022年2月、長く続いたコロナ禍にようやく収束の兆しが見えた矢先、ロシアによるウクライナ侵攻という国際秩序の根幹を揺るがす事態が発生しました。日本はEUと連携して、今までにない厳しい対露制裁とウクライナ支援にあたってきました。力による一方的な現状変更の試みは東アジアにおいても深刻化しています。EUが2021年4月に初めてインド太平洋戦略を発表するなど、アジアにおけるEUとの連携が本格化しています。また、日本は本年はG7議長国として議論をリードし、引き続き法の支配に基づく国際秩序を守り抜くとの決意を全面に押し出しています。本年7月の日EU定期首脳協議において日EU戦略対話の構築が合意され、安全保障分野における協力が新たな段階に引き上げられたことも大きな意義を持つものです。また、日一日と緊張度を増す中東情勢についても、日EU間で緊密に協議し、連携しています。
 
 経済面においても、日EU間の強固な経済的結びつきを反映してこの3年間、様々な取組が進展しました。2022年に日EUデジタルパートナーシップが立ち上げられデジタル分野での対話が大きく前進したことや昨年のデータ・フロー条交渉の大筋合意、環境・エネルギー分野において省エネ、再生可能エネルギー、水素などの分野で協力が強化されたこと、質の高いインフラ整備に関して日EU連結性パートナーシップの下で具体的な協力プロジェクトが特定されたことなどは、今後にも繋がる節目となったと考えます。経済安全保障分野においても日EU間で協力が更に強化していくことが期待されます。
 
 また、本年8月、EUが東日本大震災を受けて導入した日本産食品の輸入規制が撤廃されました。これは日本側が長年にわたりEU側に働きかけてきたものであり、輸入規制の撤廃は被災地の方々にとって大きな励みとなるものです。私自身、幼年時代を福島県で過ごし多くの思い出を持つ者として感慨深く、撤廃が実現できたことを心より歓迎します。
 
 次の任地は、私にとり新たな挑戦となりますが、日EUにとっても最大の課題であるグローバル・サウスとの連携のためにも、その雄であるインドネシアとの関係発展に全力で取り組みます。
 
 私の離任と間を置かず、後任の相川一俊駐イラン大使が着任予定です。私と変わらぬご支援・ご協力を頂けますよう、よろしくお願い申し上げます。  
(了)