正木大使から御挨拶
令和4年1月6日

2022年1月
欧州連合日本政府代表部
特命全権大使
正 木 靖
欧州連合日本政府代表部
特命全権大使
正 木 靖
早いもので2020年10月にブリュッセルに着任してから、一年が過ぎました。昨年後半も、新型コロナウイルスによる制限の下ではありましたが、G7やG20、COP26など多くの国際会議が欧州で開催されました。これらの機会も活用し、日EU関係にも多くの進展がありました。
まず、昨年9月のEUによる「インド太平洋戦略に関する共同コミュニケーション」の発表です。これは、EUがインド太平洋に関与していくとの強い意思、そして今後の具体的な取組を表明した文書です。また日本の「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」と同じ価値観に基づく、世界全体の平和と安定にも貢献するものとして、心から歓迎します。昨年1月の茂木外相(当時)のEU外務委員会出席からつながる大きな成果です。
11月には,EUはグローバルゲートウェイ戦略を発表しました。これは,3年前に日EUで合意したアジアとEUの連結性戦略の延長にあります。アジアでも,透明性,開放性,持続性のあるインフラ共同プロジェクトが早期に実現するよう努力したいと思います。
また、気候変動問題でも進展がありました。昨年11月、岸田総理は、グラスゴーで開催されたCOP26に出席し、日本による新たな4つのコミットメントとして、
(1)化石火力をゼロエミッション火力に転換するため、1億ドル規模の先導的な事業展開、
(2)アジアなどの脱炭素化支援のための革新的な資金協力の枠組み立ち上げなどに貢献し、新たに今後5年間で最大100億ドルの追加支援を行う用意があること、
(3)防災など気候変動に適応するための支援を倍増し、約148億ドルの支援の実施、
(4)世界の森林保全のため約2.4億ドルの支援、
を表明しました。日本とEUは、「2050年カーボンニュートラル」という共通の目標を持って,日EUグリーンアライアンスを立ち上げています。パンデミックからのより良い復興のためにも、同じ目標を持つ日本とEUが力を合わせ、国際社会の取組をリードして参ります。そのための日本の具体的取り組みを発表できました。これはEUにも高い評価を得ています。
このほか、デジタル分野では、セキュリティ及びプライバシーの強化を通じて安全で安心な国境を越えるデータ流通を促進することが不可欠です。このことを目的として「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」に関する日EU協力を継続し、日EU・EPAへのデータの自由な流通に関する規定の導入について引き続き議論したいと思います。EUは,幅広い分野でのデジタル・パートナーシップを日本との間で構築したいと言っており,これも喫緊の課題です。
コロナの問題でも,途上国への支援に向けて,COVAXなども通じ,日本のラストワンマイル支援とEUの支援を,効果的に組み合わせ協力することができています。
昨年後半は,ブルトン委員の訪日,岸田総理とミシェル議長,フォン・デア・ライエン委員長との電話会談,そして,日EUビジネス・ラウンドテーブルの開催と,コロナの制約の中ではありましたが,多くの日EUハイレベルでの会合がありました。
また,11月には,私自身,初めてストラスブールの欧州議会を訪問して,大きな課題の一つである欧州議員との関係を強化することができました。
今年,2022年前半のEU議長国はフランスであり、インド太平洋地域が重点分野の一つになります。また、グリーン、デジタルといった各分野での日EU協力を、フランス議長国下でさらに深化させるべく、尽力して参る所存です。同時に、日EU関係強化は、日本企業の方を始め、EUに関わる皆様との協力なしには実現が難しいことも多く、より一層緊密に連携させていただければと思います。
勿論,引き続き様々な形で,EU各国市民との文化など幅広い交流,日本の発信にも微力ながら私自身先頭に立ってつとめたいと思います。
まだまだ,コロナ禍ではありますが,2022年が皆様にとって良い年になること、そして、日本とEUとの協力にとっても良い年となることを心から祈念しております。