欧州連合日本政府代表部大使からの挨拶

2021年6月7日
欧州連合日本政府代表部 特命全権大使
正 木 靖
昨年10月にブリュッセルに着任してから、半年以上が経ちました。その間、日本とEUを取り巻く国際情勢は、めまぐるしく変化しています。昨年来、長らく続く新型コロナウィルスとの闘いも、全ての人の努力の結果、少しずつ出口が見えてきているように感じています。
日EU関係は、本年1月の茂木大臣の外務理事会出席、2月の日EU・EPA合同委員会、4月の欧州理事会による「インド太平洋における協力のためのEU戦略」の発表など、協力の深化とその成果が着実に表れています。2021年は、G7議長国と気候変動COPのホスト国が英国、G20議長国がイタリアと、欧州が舞台となる一年ですが、日EU協力は、これらを成功に導く鍵でもあります。
本年5月末、菅政権が発足してから初となる日EU定期首脳協議がバーチャル形式で開催されました。菅総理、ミシェル欧州理事会議長、フォンデアライエン欧州委員長の日EUの首脳3者が初めて一堂に会し、インド太平洋及び世界規模でのパートナーシップの強化、新型コロナウィルス感染症対策、日EUグリーンアライアンスの立ち上げ、デジタル等の分野で議論を行い、大きな成果を得ました。幅広いテーマについて、率直な意見交換を実施できたと思います。また6月には、日本はCOVAXワクチンサミットを共催し、2億ドルの貢献に加え、更に8億ドルを追加拠出することを表明しました。COVAXサミットには、フォンデアライエン欧州委員会委員長も参加するなど、ワクチンを取り巻く日EU協力も進んでいます。
日EU関係の深化として特筆すべきは、「自由で開かれたインド太平洋」の概念がEU内に浸透し、共有されてきていることです。これは世界全体の平和と安定にも貢献するものです。前述の欧州理事会による「インド太平洋における協力のためのEU戦略」では、ルールに基づく国際秩序、気候変動への取組、連結性の促進、国際法、特に国連海洋法条約の遵守、自由で開かれた海上輸送ルートの確保といった、日本と同じ立場が記載されています。
気候変動の分野においても、日EU協力で大きな進展がありました。それは、グリーンアライアンスの立ち上げであり、心から歓迎します。この気候変動というグローバルな課題への対処は、日EUにとっての共通課題であり、共に対処すべき課題です。今後、エネルギー移行、環境保護、民間部門支援、研究開発、持続可能な金融、第三国における協力、公平な気候変動対策といった内容について、日本とEUで協力を行います。そして、グリーン成長と2050年温室効果ガス排出実質ゼロを達成するため、気候中立で、生物多様性に配慮した、資源循環型の経済の実現を目指します。その中で、水素などの新たなエネルギーや風力発電などの再生可能エネルギー分野において、欧州と日本企業の協力が進むように支援したいと思います。
価値を共有する日本とEUとの協力を更に具体化していくことが必要であり、そのために、引き続き尽力して参ります。